百人一首から四十題


001.春過ぎて 夏来にけらし 白妙の
      衣ほすてふ 天の香具山(持統天皇)
002.天の原 ふりさけ見れば春日なる
      三笠の山に 出でし月かも(阿倍仲麻呂)
003.花の色は うつりにけりないたづらに
      わが身世にふるながめせし間に(小野小町)
004.これやこの 行くも帰るも別れては
      知るも知らぬも逢坂の関(蝉丸)
005.わたの原 八十島かけて漕ぎ出でぬと
      人には告げよ 天の釣舟(参議 篁)
006.天つ風 雲の通い路 吹きとぢよ
      乙女の姿 しばしとどめむ(僧正遍照)
007.みちのくのしのぶもぢずり 誰ゆゑに
      乱れそめにし 我ならなくに(河原左大臣)
008.立ち別れ いなばの山の峰に生ふる
      まつとし聞かば 今帰り来む(中納言行平)
009.ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川
      からくれなゐに水くくるとは(在原業平朝臣)
010.みかの原 わきて流るる いづみ川
      いつ見きとてか 恋しかるらむ(中納言兼輔)

011.有明の つれなく見えし別れより
      暁ばかり 憂きものはなし(壬生忠岑)
012.朝ぼらけ 有明の月と見るまでに
      吉野の里に 降れる白雪(坂上是則)
013.ひさかたの 光のどけき春の日に
      しづ心なく花の散るらむ(紀 友則)
014.夏の夜は まだ宵ながら明けぬるを
      雲のいづこに月宿るらむ(清原深養父)
015.恋すてふ わが名はまだき立ちにけり
      人知れずこそ思い初めしか(壬生忠見)
016.由良の門を 渡る舟人かぢを絶え
      行方も知らぬ 恋の道かな(曽禰好忠)
017.君がため 惜しからざりし命さへ
      長くもがなと思ひけるかな(藤原義孝)
018.明けぬれば 暮るるものとは知りながら
      なほ恨めしき 朝ぼらけかな(藤原道信朝臣)
019.滝の音は 絶えて久しくなりぬれど
      名こそ流れてなほ聞こえけれ(前大納言公任)
020.あらざらむ この世の外の思ひ出に
      今ひとたびの逢ふこともがな(和泉式部)

021.いにしへの 奈良の都の八重桜
      今日九重に 匂ひぬるかな(伊勢大輔)
022.夜をこめて 鳥のそら音ははかるとも
      よに逢坂の関はゆるさじ(清少納言)
023.春の夜の 夢ばかりなる 手枕に
      かひなく立たむ名こそ惜しけれ(周防内侍)
024.わたの原 漕ぎ出でてみればひさかたの
      雲居にまがふ沖つ白波(法性寺入道前関白太政大臣)
025.淡路島 かよふ千鳥の鳴く声に
      幾夜ねざめぬ須磨の関守(源 兼昌)
026.秋風に たなびく雲の絶え間より
      もれ出づる月の 影のさやけさ(左京大夫顕輔)
027.長からむ心も知らず 黒髪の
      乱れて今朝は 物をこそ思へ(待賢門院堀河)
028.ほととぎす 鳴きつるかたを挑むれば
      ただ有明の月ぞ残れる(後徳大寺左大臣)
029.嘆けとて 月やは物を思はする
      かこち顔なる わが涙かな(西行法師)
030.村雨の 露もまだひぬまきの葉に
      霧たちのぼる 秋の夕暮れ(寂蓮法師)

031.難波江の 蘆のかりねのひとよゆゑ
      みをつくしてや 恋ひわたるべき(皇嘉門院別当)
032.玉の緒よ 絶えなば絶えねながらへば
      しのぶることの弱りもぞする(式子内親王)
033.きりぎりす 鳴くや霜夜のさむしろに
      衣かたしきひとりかも寝む(後京極摂政前太政大臣)
034.わが袖は潮干に見えぬ 沖の石の
      人こそ知らね かわく間もなし(二上院讃岐)
035.おほけなく うき世の民におほふかな
      わがたつ杣に墨染の袖(前大僧正慈円)
036.花さそふ あらしの庭の雪ならで
      ふりゆくものはわが身なりけり(入道前太政大臣)
037.来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに
      焼くや藻塩の身もこがれつつ(権中納言定家)
038.風そよぐ ならの小川の夕暮は
      みそぎぞ夏のしるしなりける(従二位家隆)
039.人もをし人も恨めし あぢきなく
      世を思ふゆゑに物思ふ身は(後鳥羽院)
040.ももしきや古き軒端のしのぶにも
      なほあまりある昔なりけり(順徳院)

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